はじめに
集中力向上を図るためには、食事からしっかり栄養を摂取し、規則正しい生活を送ることが大切です。効率的で質の良いトレーニングをするために、今回は、集中できる(集中力を高める)食べ物・飲み物、集中力を高める生活のポイントを解説します。
■ 集中力はどれくらい保たれるのか
大人の集中力は約50分といわれています。 しかし、50分間ずっと集中できるわけではありません。 実際、継続して集中できる時間は15分程度です。 15分程度集中すると、その後は1度落ち込み、また15分程度集中するという周期をくり返します。
■ 集中力が低下する原因とは
・脳のエネルギー源が不足している
脳に栄養が行き渡らず、エネルギー不足になると、集中力が低下する恐れがあります。脳のエネルギー源は主にブドウ糖(糖質)です。朝食を抜いたり、過度な糖質制限をしたりするとブドウ糖が不足し、脳の機能を低下させることがあります。また、糖質からエネルギーを作り出すためにはビタミンB1が必須になるため、糖質を摂るときはビタミンB1も一緒に摂ることが大切です。
・集中できる時間を超えて作業をしている
どんな人でも、休まずに集中できる時間には限度があります。適度な休憩を挟まずに作業を続けていると集中が緩み、中だるみのような状態になって効率が下がります。その時間が長くなればなるほど、生産性が低下する可能性があります。
・心身の不調を抱えている
そもそも心身ともに健康でなければ、仕事や勉強に集中することは難しいでしょう。睡眠不足で脳の働きが鈍っていたり、疲労がたまって肩が凝っている、目の調子が悪い......などの症状があると作業が捗りづらくなります。また、気分が落ち込んでいたり、悩みを抱えていたりする場合、それに気をとられて心が落ちつかず、集中力が発揮できないことがあります。
■ 集中力を高める栄養素
脳の唯一のエネルギー!ブドウ糖(ぶどう、バナナ、ラムネなど)ブドウ糖(グルコース)は脳が唯一エネルギーとして利用できる物質です。
脳のエネルギー代謝量は、安静時では全身のエネルギー代謝量の約20%を占めています。エネルギー量に換算すると、350kcal/日程度となります。脳は1日に100g程度のブドウ糖を必要とします。脳は、ブドウ糖を貯蔵できないため、常に血液から取り込んでいます。血液中のブドウ糖の量は5g程度と少ないのですが、常に100mg/dL程度になるように調節されています。供給元は、肝臓に貯蔵してあるグリコーゲンです。
グリコーゲンは栄養状態が良好な人では最大で100g程度まで貯蔵することが可能ですが、そのすべてを脳が使えるわけではなく、全身で使われます。集中力が途切れそうになったときには、血糖値が下がっているときがしばしば認められます。そのようなときは、速やかに脳へブドウ糖を供給することが大切です。ブドウ糖やショ糖などの糖類を主成分とする甘いものを食べるとよいでしょう。おすすめの食品として、ぶどう、バナナ、ラムネなどがあげられます。
■ トレーニングの集中力を高める食べ物と飲み物
(1) クエン酸
柑橘類に豊富に含まれ、エネルギー代謝に必要な栄養素です。エネルギー生成をスムーズに行うことで、疲労をためにくくします
(2) BCAA(分岐鎖アミノ酸)
必須アミノ酸であるバリン・ロイシン・イソロイシンの総称です。運動前・運動中に十分な量を摂取することで、運動中の疲労を軽減する効果が見られます。運動後の摂取には筋肉の合成を促し、疲労回復につながります。
(3) ビタミンB1
体内の糖質をエネルギー源として使用する際不可欠な栄養素です。糖質は脳や神経系のエネルギー源となっています。充分なビタミンB1の摂取は体力的なものに起因する疲労だけでなく、精神的な疲労(イライラ・疲れやすいなど)にも効果を表します。
(4) ビタミンC
白血球の働きを活性化し、免疫力を高める効果があります。疾患予防や抗ストレスホルモンの合成などにもビタミンCは不可欠です。吸収率の低い植物性食品由来の鉄分(非ヘム鉄)の吸収率を高めるとともに、赤血球でのヘモグロビン合成を促進するため、貧血からくる疲労を改善します。また、タンパク質からコラーゲンを合成する働きは疲れを解消するのに効果的です。
(5) オレンジジュース
クエン酸・ビタミンCが手軽に補給できる代表的な飲み物です。
(6) トマトジュース
トマトの赤い部分には「リコピン」と呼ばれる強い抗酸化作用を持つ栄養素があります。紫外線の影響や身体の内外からのダメージを防ぎ、身体を疲労から守ります。運動前や運動中のトマトジュース摂取によって運動後の疲労が軽減される効果もあるとされています。トマトにはビタミンCも含まれているので、おすすめです。(7) 牛乳
ビタミンB群やカルシウム、鉄、たんぱく質など、牛乳は多くの栄養素を含むバランスのいい飲み物です。カルシウムの消化吸収を助ける乳糖やカゼインホスホペプチドなども含まれています。乳脂肪分には胃粘膜を保護する役割があり、胃の働きを助ける役割があります。
(8) 豆乳
牛乳同様、タンパク質が補給できます。糖質をエネルギーに変えるビタミンB1を補給したいときには大豆が原料となる豆乳を選ぶのが効果的です。
(9) 甘酒
別名「飲む点滴」ともいわれる甘酒は発酵過程で作られるビタミンやアミノ酸が豊富です。米麹由来のでんぷんが糖化された天然の甘さは体内への吸収がよいエネルギー源として疲労回復にとても効果的です。選ぶときはなるべく砂糖が添加されていないものを選びましょう。
(10) 緑茶
神経系の疲労回復、代謝活動をスムーズにする効果があります。運動後に飲用した場合、副交感神経を優位にし、疲労感・注意力が改善されるという研究結果があります。
(11) はちみつレモン
ビタミン・ミネラルを多く含むはちみつと、ビタミンC豊富なレモンの組み合わせは昔から続く疲労回復の定番です。
(12) プロテイン
効率よくたんぱく質が取れます。